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フィールド調査 Archive

千葉県館山市、富浦町:フィールド調査

●日程

2004年9月4日(土)

●視察先

1.道の駅とみうら「枇杷倶楽部」(千葉県富浦町)
2.館山市立北条小学校
3.NPO南房総IT推進協議会

●フィールド調査のポイント

※道の駅・とみうら「枇杷倶楽部」

 2000年3月に開催された、初めての全国道の駅コンクールである「道の駅グランブリ2000」で最優秀賞を受賞した道の駅です。「南房総いいとこどり」 http://www.town.tomiura.chiba.jp/index.asp という観光サイトを運営して、南房総地域の観光情報を積極的に発信しています。
 また、NPO南房総IT推進協議会が、総務省の実証実験として公共無線LANのフリースポットを設置し、また近隣の道の駅7か所の担当者が参加するML を設置して情報交換を行うという事業を実施しているが、この道の駅とみうらの担当者はこれに積極的に協力してくれています。
 今回は、これらの事業の担当者に直接、話を伺います。

※館山市立北条小学校

 昨年11月に館山市内で2校めとして「ネットデイ」を実施した小学校。 準備に半年かけたこのネットデイでは、当日約300名の参加者を集め、大成功でした。
http://www.nikkei.co.jp/digitalcore/local/11/index.html

 ただ、北条小学校がすごいのは、これで終わりではなく、その後もそのときの参加者が中心となって、「アフターネットデイ」活動として、パソコンの寄付の受け入れ/整備を行ったり、児童たちを対象としたパソコン教室「北条子どもパソコン教室」を開催したりしていることです。
 今回のフィールド調査当日は、土曜日でありながら、たまたま登校日にあたったため、臨時に「北条子どもパソコン教室」を開いてもらうことになりました。中心となって講師を務めている保護者の方のご配慮により、今回の調査メンバーも、このパソコン教室のアシスタントとしてお手伝いさせていただけることとなっています。現地の雰囲気を肌で感じることができると思います。

※NPO法人南房総IT推進協議会 http://it.awa.jp/

 館山市を中心に活動する情報化による地域の活性化を目指すNPOです。上記の北条小のネットデイ活動や、道の駅とみうらの活動を側面から支援しつつ、NPO独自の活動としても、情報インフラの整備(無線LANによるラストワンマイルの実証実験:総務省事業、地域イーサ網(地域内IX)の整備など)、情報リテラシー対策(ITヘルプデスクの運営、IT講習会の実施)、コンテンツの充実化(イベントの動画配信など)を行ってきています。今回は、このNPOの中心メンバーに話を伺います。

館山市立北条小学校の「アフターネットデイ」

教室の様子1教室の様子2教室の様子3

館山市は千葉県の南端、南房総地域に位置する人口5万人強の都市です。館山市の中心部、館山市役所に隣接したところに館山市立北条小学校が位置しています。北条小学校では、昨年11月、南房総地域で初めて、小学校での「ネットデイ」を実施し、PTAをはじめとする地域住民300名余りボランティアの手で、校内LANを敷設しました。北条小学校の「ネットデイ」については日経デジタルコアとCANフォーラムにより、以下のホームページで紹介されています。

http://www.nikkei.co.jp/digitalcore/local/11/index.html

 教室の様子4

校内LANとともに、「人のつながり」も手に入れた北条小学校では、その後、「アフターネットデイ」として、引き続き地域住民が、パソコンの敷設や子供たちに向けたパソコン教室の実施に取り組んでいます。「ネットデイ」から「アフターネットデイ」へ。その一連の取り組みを伺うため、千葉県館山市を訪問しました。

館山市1館山市2館山市3

館山市に到着して、まず最初に訪ねたのは北条小学校。市の予算だけでは整備しきれない小学校のパソコン設備を、保護者の方々が中心となって、中古パソコンの入手、整備、校内LANの敷設から稼動後のメンテナンス、授業までやってしまおうと言う「ネットデイ」の取り組みについて伺った。先方は、安西校長先生をはじめ、PTAで館山市教育委員会職員でもある石井さん、NPO南房総IT推進協議会の鈴木さん、そして、昨年のPTA会長でネットデイ実行委員長の秋山さん、同じくPTAの梨岡さん、坂東さん、下山さん、そして近くの高校で情報科の先生をされている網代先生、と多くの方が対応してくれた。

私・個人的には、以前(3?4年前)、企業系のNPOと付き合いがあり、「ネットデイ」という言葉は、そのときに耳にしたもの。ただ、市民主体のプログラムに興味は覚えたものの、どうもスポンサー(企業)の姿が見え隠れし、純粋な社会的責任の遂行と言うよりも、営業戦略の一環・・・と言った感触が抜け切れず、それきりになっていた。北条小の取り組みは、そのときの私の懸念を吹き飛ばすものだった。

まず、アフターネットデイの担い手の一人(保護者)キャサリン(坂東さん)による、メールの使い方とマナーの授業を見学。教室に入って、どうも違和感を感じる。 各児童の使用しているパソコンが、一台一台、機種が違うのだ。これは設定やメンテナンスが大変なのでは・・・と、まずは一驚き。後で聞いたところ、やはりプリンターの設定とかに苦労されている とのこと。

保護者主体で校内設備をいじる事に関しては通常、管理者側が難色を示すことが多い。まず、その点について安西校長先生に伺ったところ、

「北条小学校には、歴代の各先生が作った授業用資料をストックして管理する『カリキュラム管理室』がある。そのデータをデジタル化することが、近年の当校の課題であったが、まずパソコンの絶対数と校内LANの設備が足りず、暗礁に乗り上げていた。そこへ、保護者の会からネットデイの話があり、渡りに船だった。」

・・・と、さらっと言われるものの、やはり校長先生をはじめとする北条小の先生方の柔軟性は、成功のキーポイントの一つであったと感じられる。

ネットデイからアフターネットデイに至る取り組みを支えた方々は、必ずしも全員がパソコンとかネットに詳しいわけではない。例えば、ハードチーム責任者の梨岡さんは、通常にパソコンは操作できるものの、最初は「ハード」チームの責任者になれるほど、パソコンのハードウェアに詳しかったわけではない。館山高校の網代先生とか、色々な知識、能力を持った方々が、それぞれの力を生かし、さまざまな役割分担をこなして行ったところに成功の鍵がある。

最初はまず、パソコンが集まらなかった。やはり館山市だけでは、一定スペック(高いスペックである必要はないが)の中古パソコンを、教室で使えるほどの数、集めることは困難であることがすぐに分かった。 しかし、そのときに「アインシュタインプロジェクト」 http://www.einstein-project.gr.jp/ の存在を知った。 アインシュタインプロジェクトは、中古パソコンの再生・寄贈を行なうNPOである。

アインシュタインプロジェクトの協力により、どうにかパソコンの数を確保するメドは立ったが、引き続き、OSの無償提供とか、次々と問題が表れたが、誰か一人ががんばる・・・ということではなく、自主的な役割分担で、どうにかここまでやって来ることができた、とのこと。

昨年の活動費は5万円だが、結果として70台のパソコンを稼働させることができた。市の関与は材料費(30万円弱)のみ、とのこと。行政が入ると、どうしても上意下達になってしまう。 ネットデイは縦型組織で行なうものではない。 如何に楽しくたくさんの「人」を巻き込むか。

ネットデイを単なる安価な工事にはしたくなかった・・・と石井さん。 地域の人に関与してもらうため、いろいろな参加形態を作った。お母さん方には昼食班、子供たちからは手製のおみやげ(貝殻のストラップ)。 まず海岸へ出て、貝殻拾いから始めた。誰でも少しは参加できるように・・・その結果、ネットデイ後も参加してもらっている。

行政に期待する役割としては・・・東京やそれなりの都市ならば、大きな企業での更新替えで不要パソコンが大量にでる。しかし館山市には、そういうルートがなかった。 そういう部分を行政がサポートしてくれたらいいのに、と思っていた、とのこと。これならば、お金はあまりかからない。

最後に、再び安西校長先生の言葉を。

「北条小学校は、昔から保護者に支えられている学校なんです。そういう長年の活動に基づいた信頼関係が、ネットデイを成功させた要因だと考える。

【メモ】

館山市立北条小学校 http://www.city.tateyama.chiba.jp/school/houjyo/

(明治5年設立 現児童数740名)

■2003年11月23日(祝)ネットデイ実施。

■その後、「アフターネットデイ」活動として、引き続き「ハード」チーム、「教育支援」チームを結成し、パソコンの整備と北条子どもパソコン教室を実施。

■「北条こどもパソコン教室」については文部科学省の「地域子ども教室推進事業」として実施し、PTAが講師を務めるほか、NPO南房総IT推進協議会のITヘルプデスクメンバーもスタッフとして手伝っている。

■パソコン整備については「ハード」チームが中心となり、住民等から寄付されたパソコンの初期化、再インストールや、プリンタ、ネットワークの設定などを行っている。

北条小学校のネットデイ、アフターネットデイに関する取り組みについては、以下にメンバーによって開設された公式ホームページがあります。

http://www.city.tateyama.chiba.jp/school/houjyo/netday/nirenoki.html

(記:田中幹也)

道の駅・とみうら「枇杷倶楽部」

道の駅1道の駅2道の駅3

道の駅・とみうら「枇杷倶楽部」は館山市の北側に位置する安房郡富浦町にあります。この道の駅は、2000年3月に開催された、初めての全国道の駅コンクールである「道の駅グランブリ2000」で最優秀賞を受賞した道の駅です。「南房総いいとこどり」http://www.town.tomiura.chiba.jp/という観光サイトを運営して、南房総地域の観光情報を積極的に発信しています。北条小学校に引き続き、私たちは、「枇杷倶楽部」を訪問しました。

枇杷倶楽部1枇杷倶楽部2枇杷倶楽部3

北条小学校の取り組みにやや圧倒された後、昼食は館山の新鮮な海の幸を楽しめる「寿司」。さすが「鮨のまち、館山」、その寿司のサイズはちょっと普通ではないくらいに大きく、お値段も大変安いので、びっくり。

そして、館山市の北側に隣接する「富浦町」の道の駅「枇杷倶楽部」へ。 ここは、近隣でも有名な道の駅とのことで、リアルな場としての道の駅機能はもちろん、「南房総いいとこどり」という観光ポータルサイトを運営している。今回はその担当者、渡邊都史氏にインタビューした。

この道の駅は、千葉県で最初の道の駅で、町の枇杷倶楽部課と第三セクターの株式会社が入っている。町の方では文化や情報化のようにすぐにお金にならない方を担当し、株式会社とみうらの方は営業部門。両輪となって営業しているとのことだ。 枇杷倶楽部は南房総に観光に来るお客さんが最初に立ち寄る道の駅ということで、平成13年1月から、本格的に南房総全域を対象とした情報発信を開始した。行政が運営する場合、行政区域に拘った運営となってしまう場合も多いなか、第三セクターと連携した運営のためにこうした柔軟な対応ができたのでは、と少し感心した。

そして、観光ポータルサイト「南房総いいとこどり」だが、月間7万件のアクセスのあるウェブサイトで、「情報の収集・蓄積」、「参加型コミュニティ」、「『フェイスtoフェイス』のもてなし機能」の3つのキーワードを重視しているとのこと。 また、観光サイトということで地図はどうしても必要と考え、国土地理院のGIS地図システム(電子国土)に参加している。これは地図本体の修正は国土地理院が行ってくれるので、大変使い勝手が良いのだが、通信速度1.5MB以上が条件というのがネックだとか。実際、私たちが訪問したときにも回線が混んでいるのか、アクセスできなかった。

また、「南房総いいとこどり」の機能の一つとして、「バーチャルプランナー」という企画を実施している。これは、掲示板の機能を使用して地域の方を巻き込んで相談に回答するというもので、南房総に詳しいコンシェルジェチームが回答している。現在は、南房総地域の他の道の駅メンバーへの投げかけが多いということだった。

このように、実は南房総の道の駅の担当者はメーリングリストで情報交換を行っている。これは、昨年度、NPO南房総IT推進協議会が総務省の実証実験事業として実施したもので、各道の駅に無線LANのフリースポットを設置することと、それぞれにライブカメラを設置すること、そして、この道の駅担当者のメーリングリストを開設するというものだった。メーリングリストも初めはなかなか投稿が進まず、難儀したが、少しずつ反応が出てきているとのこと。自分が初めてメーリングリストに参加したときのことを思い出してみてもそうだが、確かに多くの人が同時に読むメーリングリストへの投稿は少し勇気がいる。今、南房総の自治体の担当者は少しずつその状況に慣れはじめているところなのだろう。

無線LANのフリースポットについても、MELCOのフリースポットマップに登録し、利用を促している。実際その存在を知っている人は結構使っているし、その存在を知らない人からも電話などで問い合わせがあるそう。ちなみに条件にもよるが、駐車場の車の中からも使えるとのこと。実際、ここに無線 LANのフリースポットがあるとわかっていれば、メールチェックしたりウェブ閲覧したりするだろうなあ、と思った。

このほか、GISのシステムについては、将来的には町民も情報を書き込めるようにシステムを整備しているところとのことだった。サイトの外国語化も含め、将来的な課題はいろいろあるが、さりげなく「参加型コミュニティ」を作り上げているところに大変感心した。

【メモ】

道の駅とみうら「枇杷倶楽部」

千葉県安房郡富浦町青木123-1 http://www.town.tomiura.chiba.jp/top/biwakurabu/

観光サイト「南房総いいとこどり」 http://www.town.tomiura.chiba.jp//

「観光情報」「旅プラン?コンシェルジュに観光相談? 」「イベント情報」「電子国土地図」「いきいき掲示板」「体験観光・体験学習」などのコーナーを開設。

(記:高橋輝子)

このウェブサイトでも、基本的には南房総のポータルサイトを目指したサイトとのことですが、さりげなくGISに書き込み機能がついていたり(今はまだレイヤー開放していないそうですが、そのうちやりたいとのこと)、「いきいき掲示板」という電子掲示板があったり、旅の相談コーナーがあったり。目指しているところはかなり私たちと共通しているよねえ、と言っていたところです。

南房総IT推進協議会

南房総1南房総2南房総3

「南房総IT推進協議会」http://it.awa.jp/は、千葉県の南部、館山市を中心とする安房地域において、地域ブランド形成のための「道の駅ネットワーク関連事業」、デジタルディバイド解消のための「ラストワンマイル安房」、ネットデイの支援、そして館山市で行われる若潮マラソンやフラメンコのライブ中継などの積極的な取り組みを行っています。これらの活動が認められ、2004年度には「日経地域情報化大賞」http://www.nikkei.co.jp/riaward/の「インターネット協会賞」を受賞しました。

南房総4

北条小学校、みちの駅・とみうら「枇杷倶楽部」と、南房総パワーを全身に浴びた後、最後に訪れたのは、館山湾に程近い「南房総IT推進協議会」の事務所でした。ここで、元自衛隊のヘリコプターのパイロットという経歴を持つ理事長の伏原さんと副理事長の鈴木さん、石井さんにお話を伺いました。

南房総IT推進協議会の活動は大変幅広いと聞いていますが

・伏原:元々は地域プロバイダをやっていました。都市にIT産業が集中してしまう状況を何とかしたかったんです。現在、地方にもブロードバンドは急速に普及していますが、インフラも人材もすべて都市に吸い上げられ、このままでは地方にはDSLだけになってしまい、何かを作り上げる場所がなくなってしまいます。自治体がIT化の援助を受けても個別に東京に直結してしまっては地域の住民にとっては使いにくいものになってしまうのです。そこで、民間の我々が地方でできること、つまり、地方でのディジタルディバイド対策として、地域の皆で協力して共通のバックボーンを持ちたいと考えています。まずインフラがあり、その上でコンテンツやリテラシーによって地域をITによって活性化させていくことができるのです。リテラシーの部分についてはヘルプデスクを行っています。道路としてのインフラとコンテンツがあっても運転マナーが必要です。

ヘルプデスクはどのように運営しているのですか

・石井:平成13年度に全国的に実施したIT講習会のパソコンが役所に残っていましたので、これを公民館に置かせてもらって「駆け込み寺」を作りました。スタッフは、IT講習会のときに、中心になってITヘルパーをやっていただいた現役をリタイアされた皆さんです。このヘルプデスク自体は無料ですが、有料による2時間×3日のパソコン講習会も併せて実施しています。また今年は、市の単独補助金を使ってヘルプデスクのスタッフを養成する講座を始めました。今後は、ネットワークを管理できる技術者、コンテンツを生み出せる技術者を養成していきたいと考えています。

地方にはネットワーク技術者が少ないという話を聞きますが

・伏原:少ないというよりも全くいないという状況です。これでは千葉以北の大規模な企業に発注が集まってしまいます。

・鈴木:地域イントラのための技術者は、ネットデイに必要なレベルの技術とはレベルが違います。行政には地元の活性化として、そういったスキルを持つ人を育成して欲しい。

・伏原:また、地域の活性化という意味ではSOHOなどのような産業政策が必要になります。

インフラ整備をNPOでやろうとしているところは珍しいのではないですか

・伏原:待っているだけではブロードバンドは来ません。地方にインターネットが急速に普及したのは地域プロバイダがあったからです。その後、eジャパン以降に東京の大手ISPが全国を飲み込んでいきました。以前は県内に13社の地域プロバイダがありましたが現在は2社だけになってしまいました。安房地域に10万世帯あるので、何とか太いバックボーンを持って来たいと考えていますが、全員で高めていかないと維持できません。

・鈴木:コストのシェアは絶対にはずせない点です。まずそれが骨格に無いとうまく行きません。そして、地域をまとめるためには、その先の連携を具体的に見える形にしていくことが必要になります。インターネットが広まってからは組織的な動きが不可欠になりました。これからは小さいグループの動きをどう育てて連携できるかが重要になります。

・伏原:今や通信のインフラは道路と同じように生活基盤になっています。東京の大手企業に任せっきりで地域のインフラが整備できるのでしょうか。どうしたら館山に地域IXを分散させることができるか、知恵を出せばやり方はあるはずと考えています。

【メモ】

南房総IT推進協議会 http://it.awa.jp/

2001年8月8日、任意団体として設立

2002年6月25日、NPO法人として設立登記

産・学・官・民がお互いの立場を尊重し合い、協働して課題解決に取り組むことにより地域の情報化を推進し地域の活性化を図ることを目的としている。

ふるさと百科データベース、南房総道の駅ネットワーク、ラストワンマイル安房、北条小ネットデイなどのコーナーがあります。

(記:戸崎将宏)

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